お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
事情を話せば、笑って家に入れてくれて、タクシー代も立て替えてくれた。

そして大家さんの家の電話を借りて母に連絡し、『今日は帰らないからいくら待っても無駄だよ』と告げたのだ。


それから数時間して、大家さんの家の窓から、母がアパートを出ていく姿を見たのは、日が落ちようとしている時刻。

それでやっと自宅に帰ることができたのに、今度はスマホが鳴り響く。

今着信から逃げても、明日明後日と、鳴り続けることだろうし、仕方なく叱られるために電話に出ると、予想通りの苦情を聞かされた。

相手方に迷惑をかけ、親に恥をかかせたと責められて、娘の将来を思っての親心がわからないのかと泣かれたのだ。


昨夜はそれが数時間続いて、時刻は深夜二時を回り、気づいたらスマホを耳に当てたまま寝落ちしていた。

だから、今朝はあくびが止まらないのである。


見合いをドタキャンしてからの顛末をかいつまんで説明したら、茜は楽しそうに笑った。
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