お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
「これであいつのことがわかっただろ?」と問われて、「うん」と素直に頷いた。

もう二度と成田さんとふたりきりにはならないと、心に誓う。

それでこの件は解決だと思ったら、私の口からあくびが出た。


高級車のシートの座り心地は抜群で、揺れさえも気持ちよく、隣に彰人がいれば安心して気を抜いていられる。

眠気がさして、つい瞼を閉じかけた私であったが、「おい」と隣から鋭い声がした。

成田さんについて語り終えた彰人が、今度は私を説教し始めるから、寝るわけにいかなくなった。


「まったく……。最初から素直に俺の言うことを聞いていれば、こんなことにはならなかったんだ。誰が判断力のある大人だって? 騙されやすいと注意してやったのに、ムキなって怒るからだ」

「はい。専務の仰る通りでございます……」


今夜はひと言も口答えせず、大人しく叱られていようと思う。

成田さんの策に引っかかったことを、自分でも情けなく思うからだ。


でも、騙されやすいと言われたことはこれまでにないし、彰人がどうしてそう思ったかについては、聞かずにいられない。

その疑問をぶつけてみると、彼はなぜか黙り込む。

運転中の凛々しい横顔を観察するようにじっと見つめて、「なんで答えないの?」と返事を催促すれば、渋々といった様子で彼は口を開く。
< 140 / 255 >

この作品をシェア

pagetop