お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
それはもちろん家業が茶問屋いうことで、幼い頃から両親に繰り返し教え込まれた結果であり、その点については感謝している。

いつでも美味しいお茶を自分で淹れて飲むことができるのは、幸せである。


完璧に淹れた玉露を、丸くコロンとした形の可愛らしい湯飲み茶わんに入れて、彰人の前に置く。

キッチンを挟んだ向かいの席では、彼が穏やかな顔をしてお茶を見ていた。

淹れたのはひとり分で、私の分はない。

朝食のしじみ汁が美味しすぎて、二度お代わりしたら、お腹がチャプチャプしているからだ。


「どうぞ飲んで。私、メイクしなくちゃ」とキッチンから出て、自分の部屋に戻るべく彰人の後ろを通ろうとしたら、腕を掴まれ、「座れ」と命じられた。


「なんで?」

「俺が飲み終えるまで隣にいろ。そこまでを含めて、莉子の淹れたお茶が飲みたいと言ったんだ」

「それは……」


どういうこと?

まるで私が隣にいないとお茶を美味しく飲めないと言われている気がして、不覚にも胸を弾ませてしまう。
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