お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
「今日のお相手は特別に素晴らしいのよ。大企業の社長の息子さんで、ご自身も専務をなさっているそうよ。これ以上ない良縁だわ。なんとしても頑張らないと!」


やる気をみなぎらせる母がそう言えば、父も張り切って加勢する。


「頭脳明晰、容姿端麗。三十一歳まで結婚せずにいてくれたことが奇跡のようだ。まるでうちの莉子との出会いを待っていたかのようで、運命を感じるな」


オホホ、アハハと笑い合いながら、無言の娘をぐいぐいと引っ張って歩く両親に、私は大きなため息をついた。

是が非でも私をどこぞの御曹司に嫁がせようと意気込む理由は、今は落ちぶれても、かつては名家だった織部のプライドがあるからだろう。


それと、もうひとつ。

今にも倒産しそうな家業に、資金援助をしてもらいたい、という狙いもある。


百八十年の歴史を守りたいという、両親の気持ちもわかるけれど、私は自分の人生を犠牲にしてまで親孝行するつもりはない。

結婚するなら、私と似たような庶民感覚を持った人の方がいい。

普通に恋愛して、お互いの相性をよく見極めてからの結婚だ。

そうでなければ、一生独身でも構わない。

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