お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
私の写真とともに、その嘘の情報も高旗専務に伝えられ、彼としてもまさか、見合い相手が部下だとは思ってもいなかったのだ。

嘘をつかれた上に見合いをドタキャンされ、『金持ちなだけのつまらないお坊っちゃま』だと面と向かって悪口を言われたら、こうして呼び出して文句をぶつけたくなるのも頷ける。


ああ、私はクビだろうか……。

ファンベル製菓で働く毎日が楽しかったのに。

さらに詳しく事情説明したら、私の気持ちを理解してもらえないだろうか……。


震えそうな両手を強く握りしめた私は、泳がせていた視線を高旗専務に向けた。

一か八かで、なにもかも正直に打ち明けよう。

それで許してもらえずクビにされたなら、仕方ないと諦めるしかない。


緊張の中で、「実はーー」と私は話しだす。

織部茶問屋の経営が危うく、それで両親が資産家の子息とばかり見合いをさせることや、それを私は苦痛に思っていることを。

お嬢様ではなく庶民的な考えの持ち主なので、御曹司とは交際する気がないことも話した。

通算十回目の昨日の見合いは、最初から会う気はなく、相手の情報を聞かず、写真も見ずに捨ててしまったことも隠さなかった。
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