お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
困惑する私に対し、彼は深いため息をついてからボソリと呟く。


「俺もこれまで何度も見合いさせられて、うんざりだ。お前の気持ちはよくわかる」


だったら、この話はなかったことにして終わりでいいのではないかと思ったのに、「だが」と語気を強めた彼が強気な瞳に私を映した。


「女から断られるのは不愉快だ。お前を俺に惚れさせて、冷たく振ってやる。そう考えれば、お前とのふたり暮らしも面白そうだな」


ニヤリと口の端をつり上げ、クククと悪党のような笑い方をする彼に、私は遠慮なく眉を寄せた。


なんなの、この人。

私から見合いを断った形で終わるのが嫌だからって、強制同居で惚れさせて振ってやるって……プライドの塊か。


全力で拒否したい気持ちではあるが、ファンベル製菓をクビにされることと天秤にかければ、二カ月耐える方を選ぶ。

もしかすると、これは私にとってもチャンスかもしれないし、茜の真似をしてなるべくいい方に考えてみよう。


入社以来、営業事務をしている私だけど、本当は製品開発の仕事がしたい。

それはファンベル製菓にどうしても就職したかった理由や、私の趣味と関連している。

専務と仲良くなれば、製品開発部に異動させてもらえるかもしれないし……。


前向きな捉え方をしてみた私は、しかめ面を解いてニッと笑ってみせる。

「わかりました。二カ月、お世話になります」と迷いのない口調で答えたら、予想外だったのか、高旗専務が凛々しい眉を上げて、目を瞬かせていた。


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