お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
このお菓子、通称『たまチョコ』と出会ったのは小学六年生の時で、以来十四年間、どっぷりとはまっている。

たまチョコのフィギュア収集が私の最大の趣味であり、ファンベル製菓にどうしても入社したかった理由もそれである。

大人気商品なので、人気シリーズはすぐに売り切れてしまい、なかなか手に入らない時もあるのだ。

社員特権で、まとめ買いできる今を、とても幸せに思っていた。


ひとつひとつ思い入れのあるフィギュアをニヤニヤと眺めては、それを慎重に並べていく。

一時間ほどかけて棚いっぱいに飾り終えた、ちょうどその時、玄関の方で物音がした。

私が立ち上がって振り向くと、リビングのドアが開けられて、帰宅した高旗専務が現れる。


時刻は二十二時十分で、こんなに遅くまで仕事だったとは気の毒に。

どうやら彼はお坊っちゃまという同じ括りにいても、私の何回目かの見合い相手のように、二カ月もクルージング旅行をするような遊び人ではないようだ。


物憂げな顔をしているのは疲労のせいなのか。

片手でネクタイを緩めつつリビングに入ってきた彼は、その目に私を映して「ただいま」と言ってから、ギョッとした顔をした。

「それはなんだ!?」と問う彼の視線の先は、私の後ろのオープンラックに移されている。

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