お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
するとその時、フロントから横に十メートルほど離れた場所にあるエレベーターが開き、扉の隙間に母の若草色の着物地がチラリと見えた。
階段で追うのではなく、引き返してエレベーターを使って降りてきたとは予想外だ。
両親と私の距離は十メートルほどで、マズイと慌てていたら、私の横を誰かが通り過ぎようとしていた。
爽やかなライトグレーのスーツに水色のネクタイを締めた長身の青年で、太ってはいないが、私をすっぽりと隠してくれそうな逞しい体格をしている。
彼はフロントの方へと真っすぐに歩いていたが、スーツの腕を掴んで引き止め、私の方を向かせた。
眉を上げて驚く彼に、事情説明している余裕はない。
彼を盾としてその影に身を隠した私は、冷や汗を流しながら、両親の声に耳を澄ませる。
「莉子がいないぞ。どこへ消えた!?」
「あなた、裏玄関かもしれないわ」
バタバタと走るふたりの足音が、フロント横の通路の奥へと遠ざかっていき、私はホッと胸を撫で下ろす。
けれども外に出るまでは用心しようとすぐに気を引きしめ直し、私に訝しげな眼差しを向けている彼に、声をかけた。
階段で追うのではなく、引き返してエレベーターを使って降りてきたとは予想外だ。
両親と私の距離は十メートルほどで、マズイと慌てていたら、私の横を誰かが通り過ぎようとしていた。
爽やかなライトグレーのスーツに水色のネクタイを締めた長身の青年で、太ってはいないが、私をすっぽりと隠してくれそうな逞しい体格をしている。
彼はフロントの方へと真っすぐに歩いていたが、スーツの腕を掴んで引き止め、私の方を向かせた。
眉を上げて驚く彼に、事情説明している余裕はない。
彼を盾としてその影に身を隠した私は、冷や汗を流しながら、両親の声に耳を澄ませる。
「莉子がいないぞ。どこへ消えた!?」
「あなた、裏玄関かもしれないわ」
バタバタと走るふたりの足音が、フロント横の通路の奥へと遠ざかっていき、私はホッと胸を撫で下ろす。
けれども外に出るまでは用心しようとすぐに気を引きしめ直し、私に訝しげな眼差しを向けている彼に、声をかけた。