お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
ところが、「え?」という西尾さんの声がして、すぐに退室してくれる雰囲気ではなかった。

「どうした?」と問う彰人に、彼女は声を震わせる。


「い、いえ、当然のことをしたまでですのに、専務からお礼の言葉をいただけるとは思わず……」


戸惑うような話し方の中に、どこか嬉しそうな響きも感じられた。


いつもお礼を言わない人に、たまに感謝を伝えられたら、必要以上に心が弾むのは理解できる。

でもこんな状況にいる私なので、共感してあげられず、秘書課に戻ってから喜んでほしいと文句を言いたくなっていた。


一方、彰人も早く彼女を退室させようとしているようで、「いつも感謝してる」と重ねてお礼を言ってから、「もう戻ってくれ」と頼むような口調で付け足した。

ところが、すっかり嬉しくなった様子の西尾さんが、「他になにかありましたら、なんでもお申し付けください!」と張り切るから、途端に彼は不機嫌になる。


「今はなにもない。下がれと言っているだろう」

「は、はい……申し訳ありません」


気落ちした声を聞けば少し可哀想に思うけど、私も彼と同意見だ。

スーツのズボンの下はどんなパンツなのかと、想像し始めた私は変態か。

そんな自分は嫌だから、お願い、早く出ていって。

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