無敵の剣
「あの血は?」


「……私が、吐きました」



どす黒い血は、胃からくるものだと
松本先生から言われたことを話した



市村君にも口止めをしている事も




「総司といい、なんで言ってくれねぇんだ
早く治療すれば、何でも治る!
ほっておくから、酷くなるんだ!」



私は、微笑んだ



「薬は、もう飲みたくない
粥など食べ、酒を飲まずにしていれば
直に治る」



「治ってねぇから、吐いたんだろうが!」


「すみません 薬だけは、もう飲めない」


「一 命令だ!治療しろ!
総司と療養して、完治して戻ってこい!」


「今は、はなれたくないんですよね
沖田さんも、同じ気持ちだと思う
やって、ダメだと思ったら
その命令に従います」



ひゅーっと風が吹き始め
少し船が揺れた




「ううっ…気持ち悪い…」


「はあ!?これくらいで酔うのかよ!?」




土方さんの腕の中で、背中を擦って貰う



「そんくらい素直に甘えたら、ええねん」




山崎さんは、微笑んだ



そして、静かに眠ってしまった



本当に、静かすぎて
ちゃんと感謝も伝えられなかった






近藤さんの呼びかけで、山崎さんの水葬に怪我人も全員参加で見送りをした






港に到着し、先に到着していた永倉さん達が、山崎さんの訃報に唇を噛み締め
涙を流した






山崎さんは、いつも裏方に徹していたが
こんなにも多くの仲間に愛されて
別れに涙を流して貰っている







「幸せな奴だな」





私が思っていたことを土方さんが口にした






私は、振り返り
もう一度海を見た




もっと、学びたかった





山崎さん、さよなら…










< 286 / 361 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop