無敵の剣
ミツが門を出る頃




「武田 女の後をつけろ
今夜、様子を見て 明け方、踏み込め」





皆に背を向けたまま
庭に視線を落としている私の袖を
深雪がちょこんと摘まむ



「あの子… 見捨てたの?」



その通りだ


ミツが、ここに来たことをあちらに知られたら、殺される


ここにいたとして、嘘の情報を寄越したのではと、疑われ… 拷問される


挙げ句 私に斬られるだろう





「酷い…… あの子は、斎藤さんの為に…」





深雪は、袖から手を離した




軽蔑しただろう

私が今まで斬ったのは
仲間だった人ばかりで…



誰もがやりたがらないような




汚れ仕事のようなものばかりだ




私の為に、命懸けでここまで来てくれた
ミツのような良い仕事ではない



仲間を欺き、裏切る行為ともいえる



「酷い!!! 斎藤さんは、仲間でしょ!?
斎藤さんの知人が信じられないの?
こんなの、斎藤さんを疑っているようや!
酷い!! 酷い!! 
斎藤さんに、あの子を見捨てさせるやなんて!!どうして、そんな事できるの?」



深雪に罵られる覚悟をしていたのに
深雪は、私を罵らなかった


怒りの矛先を土方さんに向けた



ずんずんと土方さんに向かうその後ろで
私は、静かに抜刀した



皆の空気が張りつめる









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