妹幽霊 兄と過ごした七日間


――――



 今も思い出す。最期の日。


 わたしは病気で、その日がいつかはくるって思っていた。思っていたけれど、受け入れたくない現実。でも、それは突然やってきた。


 中学生なのに制服はほとんど着たことがなくて、それが悔しいってお兄ちゃんにぼやいたことがある。


 きっと、そんなわたしのために用意してくれたんだよね。


 気を失って、一度だけ目覚めたわたし。
 布団の上に掛けられた制服。


 みんなの笑顔と涙。
 まるで卒業式みたいだなって勝手に想像していた。


 次に寝たら、きっともうお別れだってわかった。
 だから、本当は喋りたかった。
 ちゃんと伝えようとしたんだよ。


『お兄……っ』



 でも、駄目だって思いとどまった。


 お兄ちゃんを縛り付けるなんて出来ない。わたしは死んでも、お兄ちゃんはこれから生きていく人なんだから。


 わたしは、言いたかった言葉を飲み込むしかなかった。

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