10歳の年の差はどうやって埋めますか?
でも出口は確実に近づいていた。

「なんと言っていいのか分かりませんが、今日はありがとうございました。」

美術館の前で、私達は向き合って立った。

私はよく状況がつかめないまま、ぺこりと頭を下げた。

「…また美術館へご一緒していただけませんか?」

私が合わせた視線をまっすぐに受け止めた彼は、また照れくさそうに微笑んだ。

「その代り、私は絵が見る事が好きなだけで、説明が出来るような知識を持ち合わせていません。ただ今日のように並んで絵を見るだけですが、どうですか?」

何だか目の前が明るくなったような気がした。

こんな人を私は探していたのかもしれない。

「では、また今度。」

言いたい事を言って彼は立ち去ってしまった。

わたしはぼんやりとその背中を眺めていた。

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