10歳の年の差はどうやって埋めますか?
何か私に対して意地を張っているようで、私は釈然としなかった。

でも今回は総に全て委ねた。

「入ろうか。」

なぜか機嫌の直っている総は優しく私に笑いかけた。

二人の特別の時間が始まる。

本当に美術館だけは二人にとって別の時間が流れる。

決して言葉を発しない。

そしてやっぱり同じタイミングで絵を移っていく。

目を合わせるのは、やっぱり同じ。

入ってすぐは、総もいつもと同じ雰囲気だった。

ところが…、私はいくつかの絵を過ぎたところで、総が何故か落ち着きをなくしていっているように感じた。

絵を移る時は同じなのに、表情だけは硬くなっていく。

「総、どうしたの?」

私はたまらず声を掛けた。

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