10歳の年の差はどうやって埋めますか?
私は前売り券をヒラヒラさせる。

やっぱりこれを無駄にするのはもったいない。

そしてその日曜日、私は市の美術館の前に立っていた。

念の為、周りをきょろきょろと眺めてみる。

あの人の顔が見えない事にホッとしながらも、思っていたより残念に思う自分に戸惑う。

私は意を決して、中へ入る。

まず一番初めの絵の前に立つ。

すると自然に私の横に人が立った。

「久しぶりですね。待っていたんですよ。」

私は思わずそちらの方を見上げる。

あの男性があの時のようにニッコリと笑いかけた。

そして私の手を取った。

「えっ?」

< 16 / 169 >

この作品をシェア

pagetop