10歳の年の差はどうやって埋めますか?
私は反射的に手をひっこめようとした。

「…放しませんよ。」

なぜかがっちりと繋がれている彼の左手と私の右手。

「あの…。」

私の言いかけた言葉を彼が遮った。

「松田総一郎(そういちろう)、30歳。市役所に勤めています。」

彼は絵を見つめたままそう言った。

私は何が起こっているのか分からなかった。

「これで私とあなたは知り合いです。あなたの事も教えて下さい。」

「佐野悠希(ゆうき)、40歳です。」

私はボソボソと答える。

なぜか男性に倣って、年齢まで言ってしまった。

「えっ?」

その男性、松田さんはかがんで私の口元に耳をよせた。

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