10歳の年の差はどうやって埋めますか?
今一瞬だけど触れたような気がする。

それはほんのりと赤くなった彼の耳が証明しているようだ。

私はもう一度彼の耳元で名乗った。

「こないだは失礼しました。何の手掛かりもなく苦労しました。」

その男性…、松田さんが照れくさそうに口の端に笑みを浮かべた。

そして身体を起こすと、もう一度絵に視線を移した。

私は表情を読まれないように、絵を見つめながら聞いていた。

「この展示会には絶対来るだろうと毎週日曜日に待ち伏せしていました。」

「えっ?」

「今日が最終の日曜日、もしあなたが来なかったら、私は一生後悔していたでしょう。」

そして松田さんは私の方を見て、とびっきりの笑顔を見せた。

「どうしてあの時、美術館を出た後にあなたをお茶に誘わなかったんだろうって。」

そばにいた年配の女性がこちらを怪訝そうな顔で振り返った。

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