10歳の年の差はどうやって埋めますか?
こないだはこの感覚をもう少し味わいたくて出口が近く感じられたが、今回は待ち遠しいような、まだ絵を見ていたいような複雑な気持ち。

「どうでしたか?」

美術館の前で、こないだと同じように私達は向かい合って立った。

「私は絵の良し悪しは分かりません。でも真ん中ぐらいにあったあの絵が一番好きです。」

今私が思っている事を率直に述べた。

「そうですか。私は最後のあの絵が好きでした。」

私達は思わず微笑み合った。

同じ感覚で一緒に回って鑑賞しても、好きな絵が違う。

それは当たり前の事なのだが、二人の新しい発見のように感じた。

そして私達は敷地内にある中庭のベンチへ座った。

「あまりに会えないので、もしかしたら避けられているのかと思いました。」

松田さんはそんな第一声を発した。

「あんなことを話したばかりに気味悪がられているのかと考えてしまって。
でもあれがあの時の私の精一杯でした。」

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