10歳の年の差はどうやって埋めますか?
でも片手が松田さんに捕まっていて、手で顔を覆う事も出来ない。

「私と居る時は、年齢とか今更どうにもならない事は気にしないで下さい。一人の女性と私はお付き合いをしているのですから。」

松田さんはニッコリと笑った。

その言葉に私はハッとする。

「まだお付き合いはしていませんよ。」

私は余裕を取り戻した。

「参ったな。うまく丸め込めそうだと思ったのに。」

そう言って松田さんは美術館へ歩き出した。

もちろん私の手を引いて。

「もうそんなつまらない事で、私を困らせないで下さいね。」

そんな事を言いながら。

こんな状態じゃ、どちらが年上か分からないな。

私は改めて、違う面から松田さんの事を思う。

市役所に勤めているだけあって、言う事が理路整然としていて、そんな所は年相応ではない落ち着きがある。

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