10歳の年の差はどうやって埋めますか?
今回で松田さんと鑑賞をするのは三度目になるけれど、やっぱり特別な時間だ。

「今日はあの女性の肖像画が一番だったわ。」

私は美術館を出ると、思わず言った。

「へぇ~、私はその横の画家の自画像かな。」

二人で顔を見合わせて笑う。

私が好きだと言った肖像画の女性は、その画家が一生愛した妻だったのだ。

「さて、これからどうしますか?」

松田さんにそう聞かれて、私は立ち止まった。

「どこか行きたい場所はありますか?」

そう聞かれても私は戸惑ってしまった。

最近、美術館以外に出掛ける所なんてない。

何て寂しいプライベートなんだろう。

「普通、こういう時ってどこに行くんだろう。」

私がぼそっと出した言葉に、松田さんは笑う。

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