10歳の年の差はどうやって埋めますか?
するとその男性がふいにこちらを見た。

何故かその視線で、その男性も私と同じ事を感じているのではないだろうかと直感的に感じた。

私と目が合うと、その男性は少し驚いたように目を開くと、機械的に会釈をした。

私は何故か反射的に微笑み返した。

信じられないくらい自然な笑顔で、なぜか余裕の表情で。

でも次の瞬間、その男性の姿は消えていた。

恐らく後から来た人たちに紛れて、先へと急いだのだろう。

私は何だか気恥ずかしくなった。

初対面の異性に微笑み返すなんて、変な女だと思われたんだろうな。

若い子達のように気軽に話しかけることが許される年齢でない事は自覚している。

まあ、もう会う事もないのだろうから。

私は思い直して、絵に集中しようとする。

美術館に来るようになって、5年程。

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