10歳の年の差はどうやって埋めますか?
私は冷静に言葉を選ぶ。

「…女は年齢を重ねると、どんなに好きと言われても憶病になります。“どうして私が?もっと若くてかわいい子がいるじゃない”って、そんな事ばかり思うんです。まして私は松田さんより10歳も年上です。考えないようにしてもなかなかそれは難しいんです…。」

私の目の前の壁は自分が感じているより大きいのかもしれない。

すると松田さんは私の手を取った。

「…前にも言いましたが、今更変えられない事を理由にしてはいけません。私がただ聞きたいのは、悠希さんには私とお付き合いする気があるのかという事。美術館であんな特別な時間を過ごせるのは悠希さんだけなんです。それはきっと悠希さんも同じだと私は信じているんです。」

やっぱり松田さんも同じことを感じているんだ。

「…本当に本当に私で良いんですか?」

恐る恐る私は松田さんの表情を伺う。

「正直まだ松田さんの事をどう思っているのか、自分でもはっきりわかりません。どうも恋愛に対して私はとても鈍いみたいです。」

松田さんは少し心配そうな表情を見せたが、思い直したように私の目を見つめた。

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