10歳の年の差はどうやって埋めますか?
松田さんがふわっと笑った。

そんな事を話しながら、すぐそばの居酒屋へ二人で入る。

平日のせいか、中はそんなに混んでいなかった。

向かい合って席に座ると、とにかくビールと数品のメニューの注文を済ました。

松田さんが頬杖をついて私に微笑んだ。

「あの美術館での感覚は、本当に私にとって特別なんです。適度な緊張感、そして悠希さんとの一体感、そして絵を見る新しい感動…。」

やっぱり感じている事は同じようだ。

「私もそうです。そして松田さんが言ったように、私も絵の事は詳しくないんです。だから何の先入観もなく絵を見るのが楽しいんです。」

こんなにゆっくり二人で話す時間が思いがけなく訪れるなんて。

「会社の事を聞いても良いですか?」

やっぱり松田さんはその事を聞きたいんだろうなとは思っていた。

少々お酒が入りお腹も満たされ始めた頃、いつも以上に松田さんは饒舌になった。

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