イジワル上司にまるごと愛されてます
「ねえ」
「はい?」

 来海は敦子を見た。敦子は鏡を見つめたままで、その横顔は硬かった。

「部長の言う通り、私たち、もっと仲良くする必要があると思うの」

 同じ部署で同じ役職なのだから、来海としても仲良くできるならそれに越したことはない。

「はい」

 来海は神妙な顔でうなずいた。

「だから、協力してほしいのよ」
「それはもちろん。地域が違っても、担当する業務と責任は同じだと思いますし」

 来海の返事を聞いて、敦子は小さく首を横に振った。

「そうじゃなくてね」

 敦子は少し口をつぐみ、やがて意を決した表情で来海の目を見た。

「私、課長と付き合いたいのよ」

 ずばり言われて、そのことに来海は驚いた。敦子の気持ちにはうすうす気づいてはいたが、まさかこんな状況で本人から告げられるとは思ってもみなかった。

「だから……私と課長が付き合えるように協力して」

 敦子が来海に一歩迫り、来海は驚いて一歩後ずさった。
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