イジワル上司にまるごと愛されてます
「来海」

 柊哉は突然、来海の手をぐいっと引いた。

「きゃ」

 とっさのことに来海は体勢を崩し、彼の胸に飛び込んでしまった。驚いて彼の胸を押しやろうとしたが、それより早く背中に柊哉の両手が回される。彼の腕の中に囚われて、来海の鼓動が大きくなる。

「柊哉!?」

 来海の耳元で、柊哉が押し殺した声を出す。

「そいつ、来海が今、俺と二人きりだって知ったら嫉妬するかな?」
「え、あ」

 直後、後頭部に彼の手が回されたかと思うと、ラグの上に押し倒された。そのまま襲いかかるように唇を奪われ、来海はただただ目を見開く。唇を貪られ、まるで荒々しい感情をぶつけられているかのようだ。

 それが怒りなのかなんなのかわからないまま、来海は柊哉のジャケットの袖をギュッと掴んだ。覆い被さっている彼を押しやろうとするけれども、手に力が入らない。

「しゅう……」

 名前を呼ぼうと開いた唇の隙間から彼の舌が侵入した。口内を蹂躙され、舌を絡め取られ……こんなにも激しいキスは初めてだ。濃密な口づけに浮かされ溺れ、自分に向けて注がれる熱情に正気を失ってしまいそうになる。
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