イジワル上司にまるごと愛されてます
「だからなの……? だから、『女とは思えない』って、『忘れてくれ』って言ったの……?」
「そうだ。ものすごく来海を傷つけたことはわかってる。それなのに今さらこんなことを……。おまえがほかの男のものなんだと思うと、嫉妬で抑えが利かなくなった」

 柊哉は体にたまった熱を吐き出すように大きく息をつき、来海の額に自分の額を当てた。

「ごめん」

 柊哉は来海のブラウスの前をそっと合わせた。その手首を来海はギュッと掴んだ。体の奥底から熱い感情が湧き上がってきて今にも爆発しそうで、声が震える。

「許さない」
「来海……」
「ごめんなんかじゃ許さない」

 柊哉の表情が苦しそうに歪んだ。来海は目に涙をにじませながら言う。

「バカバカバカッ。柊哉のせいで……私、いまだに新しい恋ができないんだからねっ!」
「えっ、でも、付き合ってる男がいるんだろ?」
「そんなの嘘よ! 見栄を張ったの! 四年も経つのにまだ柊哉のことが好きだなんて知られたくなくて、嘘をついたの!」
< 122 / 175 >

この作品をシェア

pagetop