イジワル上司にまるごと愛されてます
「……ホントに?」
「ホントだよ。この四年間、仕事を支えにしてきた。仕事が私の恋人だったの!」

 来海は視線を逸らして続ける。

「こ、こんな恥ずかしい嘘つかないよっ。ま、まだ……」

 処女だなんて、という言葉は言えなかった。

 柊哉が来海の髪をゆっくりと撫でた。

「まだ、誰とも付き合ったことがない?」
「あっ、やっぱり引くよね? やだ、恥ずかしい……」

 来海は思わず両手で顔を覆ったが、その両手首をそっと掴まれた。

「来海」

 柊哉の優しい声が言った。

「顔を見せて」
「やだ」

 来海は真っ赤になった顔を隠そうと両手に力を入れた。だが、柊哉の力には敵わず、顔から両手を引きはがされてしまった。

(柊哉に再会するときは、大人のいい女になってるはずだったのに……)
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