イジワル上司にまるごと愛されてます
第七章 この恋はずっと
 翌朝、来海はなにか物音がしたような気がして、ふと目を開けた。ブルーのカーテン越しに外の明かりが差し込んでいる。ベッドサイドに置いたスマホを取り上げて時刻を表示させると、六時十分だった。

「はぁ……」

 来海は気だるく息を吐いた。うつぶせのまま枕に顔をうずめる。

 柊哉に抱きしめられてキスされて……四年分愛されて……満たされた幸せな気持ちで眠りについたはずなのに、ベッドにいるのは来海一人だ。

(夢……だったんだ……)

 あんな幸せすぎることが現実にあるはずがない。

 そう思って深くため息をついたとき、目にじわじわと熱いものが込み上げてきた。

「うぅ……ふ……っ」

 悲しくて、悲しすぎて、嗚咽が漏れた。

「うー……柊哉ぁ……」

 泣き声を上げたとたん、ドアの向こうのキッチンでガチャンと大きな音がした。かと思うと、シャツとスーツのズボン姿の柊哉がドアを開けて駆け寄ってくる。

「来海、どうしたっ!?」

 柊哉はベッドの前に跪いて、来海の手をギュッと握った。
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