イジワル上司にまるごと愛されてます
 柊哉は来海の手からフォークを取ってローテーブルに置き、彼女をラグに押し倒した。

「答えないと襲う」

 柊哉に真顔で言われ、来海は目を見開いた。

「えっ、そんなのダメ! 遅刻する!」
「俺は別に構わない」

 柊哉が来海の首筋にキスを落とした。その淡い刺激に、来海の背筋が痺れるように震える。

「わ、私が構うのーっ!」

 来海はギブアップ、とばかりに右手で床を叩いた。柊哉はまだ不機嫌な顔のまま、来海の手を握って彼女を引き起こした。来海は急いで説明を始める。

「あのね、柊哉がロンドンにいる間、柊哉のことを忘れようとしてたのに、尚人や雄一朗がときどき柊哉のことを話すから、結局忘れられなかったなって思ってたの! それで苦笑いしただけ!」
「ホントに?」
「ホント!」

 柊哉は大きく息を吐いて、右手で前髪をくしゃりとかき上げた。

「あいつら……結構策士だぞ」
「どういう意味?」
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