イジワル上司にまるごと愛されてます
 二人は同時に振り返って挨拶をした。手こそつないでいないが、二人の間に漂う甘い雰囲気に気づいたのか、部長は楽しげに微笑んだ。

「ほう、うまくいったようだね」

 その意味ありげな言葉を来海は不思議に思ったが、隣にいる柊哉は照れくさそうに頬をかいた。

「どうにかなったようでなによりだ」

 エレベーターのドアが開き、来海は乗り込みながら柊哉に小声で問う。

「なんの話?」
「さあね」
「なにそれ~!」
「今度教える」
「今度っていつ?」
「さあね」
「またそれ!」

 柊哉の意地悪な言葉に来海は頬を膨らませたが、こうやって彼の言葉に振り回されても、今は幸せを感じてしまうのだった。




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