イジワル上司にまるごと愛されてます



 その日の昼休みは、茉那が産休に入る前、最後に一緒に食べるランチだった。特別なときにしか行かないこじゃれたイタリアンレストランで、ランチメニューを注文したあと、来海は茉那に、昨日は部長と敦子、柊哉の四人で親睦会に行ったことを話した。

 茉那が不満そうな顔で言葉を挟む。

「じゃあ、気持ちは伝えられなかったってこと?」
「ううん。帰りに部長が気を遣ってくれて、柊哉と二人きりで帰ることになったんだ」

 そうしてそのあと、彼が四年前に言った言葉の本当の意味を説明してくれたこと、そうして付き合うことになった経緯を簡単に説明した。

 話を聞き終えて、茉那は心底嬉しそうな笑顔になった。

「わあ、よかったぁ! 四年越しの想いが実ったんだね~。これで私も安心して産休に入れる!」
「ありがとう……」

 来海は照れ笑いを浮かべながら、カルボナーラを口に入れた。茉那はラザニアをすくって来海に問う。

「ねえ、いつから雪谷くんのことを好きになったの?」
「いつからって……」

 来海はスパゲッティを巻きつける手を止めて、八年前のことを思い出す。
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