イジワル上司にまるごと愛されてます
(確かあれは、入社式に行くために電車に乗ろうとしてたときのことだったよね……)
来海は懐かしい気持ちで目を細めた。
その日は前日に降った大雨の影響で列車のダイヤが大きく乱れていた。早めに家を出たが、ホームには人があふれかえっていた。来海はバッグを肩にかけ直し、長蛇の列の最後尾に着く。
(どうしよう、乗れるかなぁ)
心配になったとき、近くから英語で呼びかける男性の声が聞こえてきた。
「Does anyone speak English?」
そちらを見ると、大きなスーツケースを引いた二十代半ばくらいの金髪の男性が、周囲に向けて声を発していた。連れの女性も不安そうな表情で、彼に寄り添っている。
(そりゃ……せっかく旅行に来た日本でこんな状態になったら……誰だって不安になるよね)
来海は辺りを見回したが、誰も彼ら二人に反応を示さない。
英語は得意ではないが、ほかの誰も応じないのなら……と、来海は勇気を出して男性に近づいた。
「あー、えっと、メイ・アイ・ヘルプ・ユー?」
男性は手に持っていたチケットを見せて、英語でなにか言った。
「えっと、パードゥン?」
来海は懐かしい気持ちで目を細めた。
その日は前日に降った大雨の影響で列車のダイヤが大きく乱れていた。早めに家を出たが、ホームには人があふれかえっていた。来海はバッグを肩にかけ直し、長蛇の列の最後尾に着く。
(どうしよう、乗れるかなぁ)
心配になったとき、近くから英語で呼びかける男性の声が聞こえてきた。
「Does anyone speak English?」
そちらを見ると、大きなスーツケースを引いた二十代半ばくらいの金髪の男性が、周囲に向けて声を発していた。連れの女性も不安そうな表情で、彼に寄り添っている。
(そりゃ……せっかく旅行に来た日本でこんな状態になったら……誰だって不安になるよね)
来海は辺りを見回したが、誰も彼ら二人に反応を示さない。
英語は得意ではないが、ほかの誰も応じないのなら……と、来海は勇気を出して男性に近づいた。
「あー、えっと、メイ・アイ・ヘルプ・ユー?」
男性は手に持っていたチケットを見せて、英語でなにか言った。
「えっと、パードゥン?」