イジワル上司にまるごと愛されてます
 何度か訊き返して、ようやく彼が京都に行きたいが、このチケットでどの電車に乗ればいいのか、と訊いているのだとわかった。

「ウィー・ハッド・ア・ヘヴィー・レイン・イエスタディ……ソー・トゥデイ……レイルウェイ・タイムテーブル……」

(えっと……電車のダイヤが乱れてて……各駅停車しか走ってないから……とりあえず来たのに乗ればいいって、なんて言えばいいの~)

 力になりたいと思ったのに、こんなつたない英語では理解できないのではないか、かえって迷惑をかけているのではないか。来海が不安になったとき、彼女の右隣に背の高い男性がすっと近づいた。そうして流暢な英語で話し始める。

(わー、救世主!)

 来海はホッとしながら右側を見上げた。真新しいスーツを着た、少し甘さを感じさせる爽やか系のイケメンだ。

 そう思った次の瞬間、来海はあっと思った。フィーカの面接試験のときに彼と話したことを思い出したのだ。それまでの就職試験で二十連敗中だった来海は、緊張のあまり朝食が喉を通らなかった。彼の隣で座って面接の順番を待っているとき、なんとお腹がぐ~っとひもじそうな音を立ててしまった。
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