イジワル上司にまるごと愛されてます
(もしかして雪谷くんがかばってくれてるの……?)

 彼はどんな女性に対してもそんなふうにするのかもしれない。たとえそうだとしても、柊哉の気遣いがとても嬉しかった。そして、そのときにはもう、来海の鼓動は加速を始めていたのだ……。



 そのときの気持ちを思いだして、来海は口元を緩めた。

「なぁに、もう~。一人でニヤニヤしちゃって」

 茉那が不満そうに言い、来海は照れ笑いを浮かべる。

「あー、ごめん。入社式の日のことを思い出してたんだ」
「ああ、前日の大雨でダイヤがすごく乱れたんだよね」
「うん、そう。私ね、朝、柊哉と駅で一緒になったんだ」

 そのときに彼に助けられたことを来海はかいつまんで説明した。茉那は感心したように小さく首を横に振った。

「そんなに前から好きだったんだぁ。もうすごい一途としか言いようがないね」
「引く?」
「引くわけないじゃない。私だって大学時代からず~っと今の旦那さま一筋だも~ん」
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