イジワル上司にまるごと愛されてます
「で、でも、柊哉はすごいよ! 確か計画では、二十五歳で海外に赴任って書いてなかったっけ?」
「うん、そう。あのころはシンガポール支社に三年くらいのつもりだったんだけど」

 八年は長いよな、と思ったとき、来海が大きく息を吸い込んで明るい声を出す。

「おめでとう! 夢への第一歩だねっ」

 柊哉は来海を見て瞬きをした。

「仕事に打ち込んで生き生きしている柊哉は、すごいなっていつも思ってたんだ。私たちの自慢の同期だよ! 私も日本でがんばる。柊哉みたいにワークライフプラン通りに昇進できるかどうかは、わからないけど」

 来海はおどけように小さく舌を出した。

「来海は、日本で」

 柊哉はゆっくりと、噛みしめるように言葉を発した。

「うん、私、英語苦手だし。それに私のワークライフプランには海外赴任は入ってないも~ん。今日は嬉しい報告をありがとう。さあさあ、景気づけに飲も飲も~!」

 来海はレモンサワーのグラスを取り上げ、柊哉の日本酒のグラスに強引にカチンと合わせた。



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