イジワル上司にまるごと愛されてます



 今日の来海はいつも以上にはしゃいでいて、柊哉には来海が彼の辞令を祝ってくれているように思えた。

 来海はレモンサワーをお代わりしたのもあって、居酒屋を出る頃にはまっすぐ歩けなくなっていた。

「大丈夫か?」

 柊哉の問いかけに、来海はへらへらっと笑って答える。

「だいじょぶ、だいじょぶ!」

(酔っ払いの『大丈夫』ほど信用できないものはないよな)

 柊哉はため息をついた。

「いつもは一杯しか飲まないのに。今日は一杯多かったな」

 柊哉は来海を支えるように腰に手を回した。思ったよりも華奢なことに、今さらながら気づかされる。

「ほら、寄りかかってろ」

 柊哉は来海をそっと引き寄せた。

「あ、りがと」

 来海が柊哉のスーツの背中に手を回した。

「タクシーで帰る方がいいだろうな」

 柊哉は大通りでタクシーを止めて、来海を支えながら後部座席に乗り込んだ。来海が住所を伝えて、ふらふらしながら頭を窓ガラスにもたせかけた。
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