イジワル上司にまるごと愛されてます
(これ以上、俺の気持ちを乱さないでくれ)

 柊哉は残っていた自制心をかき集めて立ち上がった。今にも泣き出しそうな来海を見て、彼の心がキリキリと痛む。

「忘れてくれ。俺も忘れる」

 心の中でごめん、とつぶやき、柊哉は未練を振り払うように来海の部屋を出た。

 八年も経てば、お互いの気持ちが過去のものになるだろう、とはかない期待を寄せながら――。 
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