イジワル上司にまるごと愛されてます
(デザートはないんだ)

 来海は少し残念に思ったが、柊哉がこの日のために、と予約してくれたのだ。コース料理のデザートがないのなら、スイーツは諦めることにした。

 来海はティーカップを取り上げながら彼に礼を言う。

「今日はステキなディナーをありがとう」
「どういたしまして。『誕生日プレゼントになにがほしい?』って訊いたら、来海が『柊哉と一緒に過ごせたら、それが一番のプレゼント』なんてかわいいことを言うから、一生懸命考えたんだ」

 柊哉が言う通り、二週間前に彼にそう訊かれた。本当は『柊哉と“一生”一緒に過ごせたら、それが一番のプレゼント』だと答えたかったけれど、付き合って四ヵ月でそんなことを言うのは早すぎるかな、と自制した。三十歳までに結婚、というワークライフプランは叶いそうにないが、大切なのはプラン通りに人生を進めることではない。柊哉にも、一生一緒にいたいと思ってもらえたときが、本当の適齢期なのだと思う。

 来海は紅茶を一口飲んで、一日を振り返った。

 今日は昼前に待ち合わせて、ロープウェイに乗ってハーブ園に行った。ハーブを使った料理を食べ、さまざまな種類のハーブを見て回り、香りに癒やされる時間だった。
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