イジワル上司にまるごと愛されてます
「ハーブ園のデートも楽しかったよ」
「俺もだ。でも、来海が花屋で食虫植物を欲しがったのにはびっくりしたな。見た目はイマイチだけど、来海が欲しいって言うのなら……って思って、本気でプレゼントしようと思ったのに」

 柊哉に軽く睨まれて、来海は小さく舌を出した。

「たまには私が柊哉を振り回してもいいかなって思って」
「ああ、やられたよ。今夜はおしおきを覚悟しておけよ」

 柊哉がニヤリとした。

「ひゃー、怖い」

 来海はおどけて首を縮ませた。けれど、彼は“おしおき”なんて言いつつも、結局はいつも来海を思いやって大切にしてくれるのだ。

 そうしてドリンクを飲み終えたあと、柊哉がテーブルで会計を済ませて、二人で店を出た。

 エレベーターで二階下に下りて、宿泊予定のスイートルームに向かう。柊哉がカードキーでロックを解除してドアを開け、来海に先に入るよう手で促した。

「ありがとう」

 来海は部屋に一歩足を踏み入れたが、カーテンが閉められているようで、室内は真っ暗だった。

(暗いなぁ……)

「今、明かりをつける」
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