イジワル上司にまるごと愛されてます
「このケーキはまだ完成していないんだ」

 柊哉は冷蔵庫に近づいて扉を開けた。中から白い皿を取り出し、のっていたホワイトチョコレートのプレートを取り上げる。そしてそれをおもむろにケーキの中央に刺した。そこにはチョコレートの文字で“Will you marry me?”と書かれている。

「柊哉」

 来海は胸がいっぱいになって、目を潤ませながら彼を見た。柊哉は胸ポケットに手を入れて、黒い小さな箱を取り出した。彼が蓋を開け、大粒のダイヤモンドを抱いた指輪が現れる。

 柊哉は真剣な表情で来海を見つめる。

「来海と四年離れて再会して、俺にとっての一番の幸せは、来海がそばにいてくれることなんだと気づいた。そしてそんな来海を、ほかの誰かじゃなく、俺が幸せにしたいんだ。どうかこれからも俺のそばにいてほしい」

 彼も同じ気持ちを持ってくれていたことが嬉しくて、来海は胸が、そして声も震える。

「わ、私もずっと柊哉のそばにいたい」
「俺と結婚してくれる?」
「はい!」
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