イジワル上司にまるごと愛されてます
「そうかもしれませんね。木下主任って思った以上に“肉食”っぽいですしね」

 美由香はクスリと笑って、スパークリングワインのグラスに手を伸ばした。来海はおもしろくない気分でピザにかじりついた。次はカルボナーラでも食べようかと思ったとき、追加のドリンクが運ばれてくる。

「お待たせしました、カシスソーダです」
「ありがとう」

 来海はさっそくカシスソーダをゴクゴクと飲む。二つ隣の席では、敦子が赤ワインを一口飲んで、「あ、おいしい」とかわいらしい声を出した。

「飲み放題だからあまり期待してなかったんだけど、いけるわよ、これ。飲んでみて」

 敦子が柊哉にワイングラスを向けた。

(か、間接キス!)

 来海は心の中で悲鳴を上げた。そんなことを気にする年齢ではないのかもしれない。でも、敦子のグロスがついたグラスに柊哉が唇をつけるなんて、想像するのも嫌だ。

 来海はガタンと椅子から立ち上がった。

「来海さん?」
「お手洗い」

 美由香の声に小声で答えて、来海は個室の出口に向かった。もうすでに酔いが回っていて、頭も足元もふわふわする。来海は壁に手をつきながら個室を出た。
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