イジワル上司にまるごと愛されてます
(なに嫉妬してるんだろう。そんな資格、私にはないのに)

 来海は女子トイレの個室に入り、ドアにもたれて大きく息を吐き出した。

(柊哉……ホントに帰ってきたんだ)

 一ヵ月前、糸田課長の転勤が決まり、その後任として柊哉が帰国してくると知らされてから、彼に会いたい気持ちと会いたくない気持ちが心の中でずっとケンカをしていた。そんな複雑な気持ちになるのは、柊哉にひどい振られ方をしたからなのだと思い込もうとしていた。けれど……頭の片隅では、本当の理由は別にある、と気づいていた。そして今日、柊哉に再会し、本当の理由――自分の中にまだ彼への想いが残っていること――を再確認してしまったのだ。

(私って未練たらしいなぁ。きっぱり振られてるのに……)

 目を閉じると、四年前の出来事が脳裏に蘇ってくる。




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