イジワル上司にまるごと愛されてます
「どうしたの? まさか……左遷のお知らせ? っていうか、私たち平社員だから、左遷もなにもないか」

 柊哉は小さく笑みをこぼした。

「転勤の辞令だった」
「えっ、転勤!?」
「それも遠くへのね」
「遠くって……北海道とか沖縄とか?」
「もっと遠い」

 柊哉が息を吐き、来海は得体の知れない不安を覚える。

「……シンガポール支社?」
「いや、イギリスだ」
「えっ、イギリスに支社なんてないじゃない」

 柊哉は日本酒を一口飲んだ。

「ああ。ロンドンにイギリス支社を立ち上げるんだそうだ。ヨーロッパとの取引が円滑になるように」
「え、あ、そうなんだ……。確かにロンドンは遠いよね。でも、柊哉は、海外支社で活躍したいってワークライフプランを立ててなかった?」
「そうだな」
「それが叶うんだから……喜んでいいんじゃないの?」
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