イジワル上司にまるごと愛されてます
 成績も平凡、容姿も平凡で、学生時代は誰かの引き立て役になることばかり。モテたことなどなかった。おまけにこの四年間は、柊哉のことを忘れようと仕事に打ち込んでいた。まさに“仕事が恋人”だったのだ。

 でも、柊哉は違うだろう。きっとイギリスでも女性との出会いがあっただろうし、彼と釣り合うような知的な美人とデートだってしていたかもしれない。

 それを考えると、とんでもない言葉が口をついて出てくる。

「そうだけど、で、でも、だからって、モテてないってわけじゃないんだから」
「じゃあ、彼氏が……いるのか?」

 柊哉が眉を寄せた。その表情を見て、私に彼氏がいたらおかしいとでも言うのだろうか、とカチンと来て、つい見栄を張ってしまう。

「いたら悪い!?」
「いや、悪くはないけど……」
「“けど”ってなによ?」

 柊哉は少し考えるように視線を落としたが、やがて来海を見た。

「そいつ、俺の知ってるやつ?」

 まさかそんなことを訊かれるとは思っていなかったので、来海はどもりながら答える。
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