イジワル上司にまるごと愛されてます
「も、もちろんです。送っていただいたら、すぐにお帰りいただきます」

 敦子は来海の手を離し、柊哉に歩み寄った。

「あなたの歓迎会なんだから、二次会には絶対に戻ってきて。このビルの十階のバーに行くから」
「……わかりました」

 柊哉はしぶしぶといった調子でうなずいた。柊哉に腕を引っ張られたまま、来海はレストランを出る。

「タクシー乗り場まででいいです」
「ダメだ」

 柊哉はきっぱりと言って、来海の腕を掴んだまま大通りに向かった。そうして走ってきたタクシーを止める。

「ほら」

 柊哉に押し込まれるようにして来海はタクシーに乗せられた。続いて柊哉が乗り込み、来海は運転手に住所を伝える。

「出発しますよ」

 運転手が言って、ゆっくりとタクシーが走り出し、来海は座席に背を預けた。

 頭がクラクラして飲み過ぎたことは自分でもわかるが、それでも柊哉に押し切られる形で歓迎会から帰らされたことはおもしろくない。

「あーあ、デザート、食べ損ねちゃった。楽しみにしてたのにな~」

 来海は嫌味っぽく言ってやった。
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