イジワル上司にまるごと愛されてます
「そんな状態でまだ食えるのか。食い意地張ってんな」

 柊哉が呆れたように言い、来海はつんと窓ガラスの方を向いた。

「だいたい大げさなのよ。このくらい平気なのに」

 来海はブツブツと言った。

「俺が送るって決めたんだ」

 来海がふと視線を移動させると、窓ガラスに映った柊哉と目が合った。強い眼差しに見つめられ、とっさに視線を逸らす。

(そんなふうにまっすぐ見つめないで)

 来海はヘッドレストに横向きに頭を預けて、話しかけるなという合図代わりに目を閉じた。



 来海は体がふわふわと揺れるような感覚で、ふと目を覚ました。

「なに……?」

 ぼんやりと声を漏らすと、頭上から低い声が降ってくる。

「やっと目が覚めた?」

 重いまぶたを持ち上げたら、すぐ前に柊哉の顔があり、来海はびっくりして目を見開いた。そして、彼にお姫さま抱っこされた状態で運ばれていることに気づく。
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