イジワル上司にまるごと愛されてます
 柊哉は怪訝そうに首を傾げ、まじまじと来海を見る。

「なんで木下主任が出てくるんだ?」
「だって! 柊哉の歓迎会だっていうのに、主任ばっかり柊哉としゃべってて! 木下主任のワインだって、味見したんでしょ?」
「え? してないよ」
「だって、木下主任がグラスを……」

 そのときの様子を思い出して、来海は頬を膨らませた。

「それって……もしかしてヤキモチ?」

 柊哉に問われて、来海は目を見開いた。まだ彼のことが好きだなんて悟られたくなくて、急いで答える。

「まさか。私が木下主任にヤキモチなんか焼くわけないじゃない。ちゃーんと心の支えがあるんだから」
「……だよな」
「わかったら、手を早く離して!」

 来海は柊哉に掴まれたままの手を、催促するように動かした。

「悪い」

 ようやく柊哉は来海の両手を解放した。

「柊哉の帰りが遅くなったら、私が木下主任に怒られちゃうんだから。早く二次会に行って」
「来海こそちゃんと部屋の中まで入れ。来海の無事を見届けないと帰らない」
「強情」
「どっちが」
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