イジワル上司にまるごと愛されてます
「はぐれるなよ」

 柊哉が来海の手をギュッと握った。

「うん」

 もう胸が苦しいくらいで、来海はうなずくのがやっとだった。

「ベビー用品を売ってるショップって、何店舗もあるんだな」

 柊哉は言って振り返ったが、来海が真っ赤な顔でうつむいているのを見て足を止める。

「人混みに酔ったのか?」

 柊哉が来海のほてった頬に右手で触れ、来海の心臓が飛び跳ねた。

「そ、そうかも。でも、大丈夫」
「心配だな。先になにか飲もうか」

 柊哉はフロアをぐるりと見回し、エスカレーターの近くにカフェが入っているのを見つけた。しかし、店内は満席らしく、店の外に行列ができている。

「いいよ、先に買い物しよう。私は大丈夫だから」
「本当に?」

 柊哉が来海の顔を覗き込み、その距離の近さにドギマギして、来海は顎を引いた。

「うん、大丈夫」
「気分が悪くなったらすぐに言えよ」
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