イジワル上司にまるごと愛されてます
 柊哉は本気で心配してくれているようだ。来海が真っ赤になっている原因が彼なのだと気づいていないらしい。

 意地悪を言うかと思えば、こういう気遣いを見せてくれる。そういうギャップに胸がキュンとしてしまう。

(やっぱり私……柊哉のことが好きだな……)

 柊哉に振られてからの四年間、彼以外の男性に目を向けようと努力しようとした。異動してきた先輩社員や後輩社員を、かっこいいな、と思ったこともあったけれど、それだけだった。こんなふうに胸が高鳴ったり、心を揺さぶられたりすることはなかったのだ。

(これはもう重症だわ)

 来海は諦めにも似た気持ちで内心ため息をついた。

 彼を好きだという気持ちは、どうあがいても消えないらしい。それならばいっそのこと、この状況を楽しんでしまおう、という気になってきた。

(柊哉とのデートだって思えばいいんだ!)

「ね、あっちのショップを見てみたい」

 来海はカラフルなロゴが掲げられたベビー用品のショップを指差した。日本製にこだわったベビーウェアで有名なブランドだ。
< 69 / 175 >

この作品をシェア

pagetop