イジワル上司にまるごと愛されてます
「尚人たちも納得してくれるといいんだけど」
「大丈夫だろ。ドタキャンしたやつらに文句は言わせない」

 エレベーターホールについて、柊哉は下ボタンを押した。待っている客の姿もなく、ほどなくして下りエレベーターが到着する。

 中は空いていて、乗り込んでから柊哉は来海の顔を見た。

「顔色、ずいぶんましになったな」
「あ、うん。もう大丈夫」

 来海は彼から一歩離れた。むやみに近づくと、また心拍数が上がりそうで危険だ。

 そんな来海の横で柊哉は腕時計を見た。

「飯にはまだ早いか」

 来海がバッグのスマホを見ると、五時二十分と表示されていた。

「あ、そうだね」
「それじゃ、時間つぶしに隣のビルの展望台に上ろうか? 今なら夕焼けに間に合うだろうな」
「私、展望台に上ったことないんだ」
「へえ、じゃあ、ちょうどいいな。一度上ったことがあるけど、夜景もキレイだったよ」
「ふぅん」

(柊哉はデートで来たことがあるんだ)

 そう思うと、おもしろくない気分だ。
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